洗面所で手を洗った時
何気なく見た鏡
まじまじと見る自分の顔
あれ、私こんなだったっけ?
こんな顔つきだった?
というか、、私の後ろにあるのは何だ?
振り返っても、もちろん何もない
もう一度鏡の中を見る
一歩引いて全体を見てみようとする
ほんとのところ、怖くて足は震えそう
だけど、すました顔して立っている
鏡の中に見えるのは
服
古い子供服、流行遅れの若者の服の塊
シェパードの子犬のぼやけた姿
父のカメラと黒い革のカメラケース
色褪せた大量の文庫本、ぬいぐるみ
何百本も絡まり合った点滴のチューブ
古い靴が詰まったビニール袋
破れたエプロン
子どもが作った数々の古い工作
あらゆる酒の空瓶、空き缶
使い古された化粧品の残骸
スクラップされてきれいに立方体に整型された見覚えのある自転車たち
ぼんやりと、でも生々しく浮かぶこれらの影で、鏡に映る私の背後はギッシリ埋め尽くされていた
私は身震いしながら目を閉じた
自問自答
Q.あなたこのまま行きたい?
A.行きたくない。こんなの背負ってたなんて知らなかった。
Q.全部切り離して別の線路に乗り換える?
A.乗り換える!今すぐ!
目を閉じたまま、乗っている車両を切り離したあと外に出て、イメージの中の線路の分岐器を切り替えた
ガシャン!
ゆっくり目を開ける…
背後のものたちはすっかり消えていた
暮れかけた西陽がちょうど目に差し込んで、思わず目を細めた
鏡に映っているのは
白い壁
棚の中の白いタオル
化粧品の瓶
掛け時計
それから
見覚えのある人
懐かしい瞳
やあ久しぶり
ここから楽しくやっていきましょう
7/30/2023, 10:54:46 AM