『冬の足音』
冬は、猫のような足音をしている。
ほとんど体重を感じさせない音。
ヒタヒタとやってきて、いつの間にかすぐ側まで迫っているのだ。
「冬の精霊が来たぞ!」
「早く玄関にリースを飾らなくちゃ!」
この世界では、精霊と人間が近くにある。
お互いに「隣人」として、人間は精霊に「習慣」を与え、精霊は人間に「結果」を与える。
冬の精霊は、リースを飾るという習慣の対価に、凍える冬をもたらすのだ。
冬の精霊が冬をもたらしてくれなければ、春の精霊がやってこない。
永遠に季節が巡らなくなってしまうので、人々は冬にリースを捧げるのだ。
ヒタヒタ、ヒタヒタ。
今年も冬がやってくる。
リースを見つめて、眷属の馬に跨って。
ふう、と息を吐いたら、そこは冬。
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以前書いた涼風の精霊の話(『落ち葉の道』)と同じ世界観です。
12/3/2025, 3:29:56 PM