【逃げられない】
光が当たらない場所でもがいた時に
何かが微かに手に当たった
僕以外の全ては敵だ
だから、僕は僕の安全を、僕が守らなくてはいけない。
当たったなにかを思いっきり引っ掻いて
こっちにくるなって出せる限りの暴言だって吐いた
それなのに当たったなにかはどんどんと僕の身体にまとわりついてくる
それなのに全く息苦しくない
なにかが全身を全て覆った時
「 」
耳元で声がした
僕が今まで聞いてきた声とは似ても似つかない
温度を感じる声
抵抗していた手が自然と降りて
僕に与えられたその声を、
誰にも触れられないように耳に蓋をした
僕から離れていかないように
ふさいだ手のひらを優しく握られた気がした
--それから、もうたくさんの時が経ったけど
僕はあの声とあの手から抜け出せずにいる
でも、人生に縛り付けられたって
この心地よい音から逃げられない
唯一、僕のそばに居てくれる温もりだから
2024-05-23
5/23/2024, 1:13:31 PM