花圃

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"欲望"

出逢った頃は遠目から見れれば十分で。
なのに少し経つと、目が合わない事にもやもやして
女の子達に囲まれる貴方が恨めしくて
真っ黒な感情に苛まれて、
彼女達はただ談笑しているだけなのに
当時はまるで貴方を誑かす悪女のように見えていました。
それから一年経つと、一日話せないだけで心臓がきゅーっと痛くて
すれ違う度に目で追いかけてしまって
影も見えない時ですら貴方を探しては
すっかり顔を出した感情に名前をつける事を躊躇っていました。
そして卒業して三年経った頃。
あの頃、憧憬や感謝だと恋愛感情なんかじゃないと
否定し続けていたものが本物だと実感しました。
じゃなきゃ、ここまで生きてはいなかったと。
改めて、好きだと思った瞬間でしたね。
でも、貴方に会う術も理由もないことを痛感しました。
もうあの頃のように貴方の姿を探しても見当たらないんだな、と。
でも諦めきれなかったんです。なんででしょうね。
そして更に二年後の、成人式前夜。
学生時代に何度か掛けていた貴方の電話番号に連絡しました。
例え繋がらなくても、忘れられていても知るものか、と。
貴方は拍子抜けするくらいいつも通りでしたね。
本当に、笑っちゃうくらい。
「また明日、お待ちしてますよ。」
なんて、少しおどけたような、でも念押しするような声音で。
「善処します。」
それに対して、あの頃の口癖だった言葉で返せば「うわ出た!」と
笑ってくれた事ですら忘れられてないんだと嬉しくなったこと、
貴方は欠片も考えていないんでしょうね。
それから吐くほど緊張しながらも参加した成人式で
貴方に褒められたりと色々あり現在。

欲は果てなく膨れ上がっています。
あの頃とは比べ物にならない程貪欲に、我儘に。
いつか、私自身が欲に呑み込まれてしまいそうな程に。

3/1/2024, 12:05:56 PM