→短編・想い出箱
僕はパソコンを自作している。自分で組み立てたものが動く達成感と、パーツの組み換えが効くのが何とも楽しい。
ケースだけは買い換えていなかったのだが、先日とうとう新調した。
「まるでテセウスの船ね」
妻が横に寄ってきた。
なるほど、僕の愛機問題は同一性の問題に近しい。僕の愛機に、初期のパーツはもう残っていない。それでも僕の愛機と呼べるのか、感覚派と実体派のバトル。
「ケースまで変わってるんだから、テセウスの船よりも同一性はないけれど、コイツは昔から変わらない僕の愛機さ。
何せ想い出が詰まってるからね。例えば、君にパーツ選びを付き合ってもらった時のこととかね」
僕の言葉を受けて、妻がニヤッと笑った。
「例えば、動かないって大騒ぎして電源のコード?を挿し忘れてたときのこととか?」
寄りかかってきた彼女に対抗するように、僕も寄りかかる。
「あれ一回きりだし、割とあるあるなんだよ」
「そういうことにしといてあげる」
僕の愛機には、こんな想い出がたくさん詰まっている。
テーマ; たくさんの想い出
11/19/2024, 3:12:20 AM