『10年後の私から届いた手紙』
外から帰ってくると家の郵便受けの近くに所在無げな配達員さんが立っていた。よく見かける郵便局の制服とちょっと違うな、と見ているとこちらに気づいて会釈をされる。
「すいません、ちょっと、……いやかなり不審なこと言いますけど一旦聞いてください」
「は、はぁ」
「未来のあなたから手紙の配達を承ったので届けに来ましたが、どうされますか」
「なん、……え、未来から?」
「やっぱそうなりますよねぇ」
こちらは困惑しているし、配達員さんは胃に穴が空きそうな感じの困り方をしている。めちゃめちゃに不審ではあるのだが、放っておくにはかわいそうな気がする。
「未来から来たってことですか」
「ええ、そうなんです」
「いつ頃です?」
「10年後ですね」
「たったの10年で未来から手紙が届くようになるんですか」
「技術的にはそうなったんですけど、今テスト段階でして。過去の人に説明付きで配達しないといけなくてですね、」
「配達員さんたちに負担がかかりまくってるってことですか」
「そうなんです……」
配達員さんは胃のあたりを押さえている。心中察するに余りある。
「で、手紙なんですけど、受け取るか拒否するか選んで頂く形になってまして」
「未来のことがちょっとでもわかっちゃうからですか」
「そうです」
「……配達員さん的にはぶっちゃけどうしてほしいですか」
「今テスト配達中の受取りを全拒否してほしいです」
「ですよね~」
ということで受け取り拒否に同意する書類にサインをし、配達員さんはようやく未来へと帰ることができた。
未来の出来事に興味はあるにはあるが、10年は意外と早い。じきにこの目で見ることになるのだろう。
2/16/2024, 4:15:25 AM