彩音

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「 美しい 」


彼は私の方を見て唐突にそう言った 。
普段はそんなこと口にしない 。
私は驚いて彼を凝視した 。

たっぷり数秒間固まった後、彼に聞き返した 。


「 どんなところが ? 」

「 艶やかな茶色の髪に愛くるしい瞳 。 」


彼は顔色一つ変えずに続ける 。


「 人形のように細い四肢、しなやかな身体 。 」


彼にこんなにも褒められたのはいつぶりだろう 。
頬が赤くなるのを自覚する 。

”ありがとう、── もかっこいいよ ”

と口にしようとした時 。



「 うちでも飼いたいな 」

「 え? 」


彼の言葉に思わず素っ頓狂な声をあげてしまった 。

戸惑いながらも彼の視線を辿る 。



彼の瞳が捉えていたのは

私ではなく、





────私の後ろを歩く子犬だった 。



# 3 『 美しい 』

1/16/2024, 11:49:40 AM