未知亜

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ㅤじゃあね、今度こそ寝るから、おやすみ。
ㅤ今日もしつこいくらい言い合って、オンライの通話を終えた。転勤を言い渡されて三週間。三日と空けず話していても、いつも切る間際に寂しくなってしまう。慣れることなんか出来そうになかった。
ㅤ真っ暗になった液晶画面の前で、机に頭を懐かせた私は大きく息を吐く。
「……あいたいなあー」
ㅤどんなに離れていても愛があれば、なんて綺麗事だ。大丈夫だと思ってたのに、今日は誰とどんな話をしたのか、なにがあなたを笑顔にしたのか、もっとそばで見たくて知りたくてどうしようもない。
「ストーカーかよ」
ㅤ突っ伏したまま呟くと、微かに笑い声がした。私はバッと頭を上げる。暗転したとばかり思っていた画面に、困ったようなあなたの笑顔。
「ストーカーなんだ、咲ちゃん」
「えっ……なんで」
「接続不良かな。途切れたと思ったら繋がってた」
ㅤめちゃくちゃ恥ずかしい。どこまで声に出てたのかあまり記憶がなかった。
「連休さ、一回戻るよ。泊めてくれる?ㅤストーカーちゃん」
「え、だって休み取れないって——」
「遠い親戚に、ちょっと儚くなってもらおうかと」
ㅤ鼻の頭を擦りながらそんなこと言うのが可笑しかった。生真面目なあなたが愛おしい。
ㅤさっきの言葉は訂正かな。どんなに離れていても、あなたの愛があれば私は絶対大丈夫。……だけど、やっぱり、時々は戻ってきて。


『どんなに離れていても』

4/27/2025, 9:31:41 AM