悪役令嬢

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『特別な夜』

今宵は大臣主催による舞踏会に招かれておりますわ!
大臣と握手を交わしていると、
歓声が聞こえてきました。

そちらへ視線を向けると、そこには人々の輪の中で不敵な笑みを浮かべる道化師が立っていました。
道化師は手に持っていたナイフで見事なジャグリングを決めてみせ、皆が彼に賞賛の拍手を送っています。

私もその華麗なナイフ捌きに感心していると、
大臣が訝しげな眼差しで彼の部下を見ました。

「あの道化師は何だ?あの様な催しは
呼んだ覚えがないぞ」
「安心してください。彼はフレンドリーです!」

それから私は人脈作りのために貴族たちとの
会話に励んでおりますと、突然どこかから
悲鳴が聞こえてきました。

その場へ駆けつけると、茂みの中で男女が
抱き合ったまま見るも無惨な姿となり
絶命しているではありませんか!

すると今度は大広間で何やら
騒ぎが起こっているようです。
遺体はセバスチャンに任せて急いで広間へ
行きますと、ステージ上に先程の道化師と
逆さまに吊るされた大臣の姿がありました。
周囲には衛兵らしき者達が血を流して倒れています。

道化師はニタリと笑って、大臣の股の間に
ノコギリをギコギコと入れていき、
彼の身体を真っ二つにしています。
それはまるでマグロの解体ショーでも
見ているようでした。

人々がパニックに陥り逃げ惑う中、
道化師は血塗れのノコギリを握り締めたまま、
ゆっくりとこちらへ近付いてきます。

私はドレスの下から武器を取り出し
臨戦態勢に入りました。
悪役令嬢と道化師、二つの視線が混じり合う。
血塗られた『特別な夜』が今、幕を開ける────

1/21/2024, 2:51:42 PM