月凪あゆむ

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正直

 今日は。今日こそは言おう、と意気込み、前を向く。前にいるのは付き合って3ヶ月の彼女だ。

「あの、さ……」
「うん? あ、今日も用意してきたからね、お弁当!」
「あ、あぁ……、ありがとう」

 頑張れ俺! 先延ばしにして、何が良いことがある? さあ!

「ちょっと、正直なことを懺悔してもいい?」
「? いいけど、懺悔って?」


「俺の家、弁当屋なんだ」

「…………え?」
「だから、その。……君の作ってくれる弁当よりも、たぶん、俺のほうが、料理旨いんだ」
「…………」


 その後。
「サイテー!」と、青空に響いた、女子の甲高い声。


「あ、またあいつカミングアウトしちゃったんだ?」
「もうちょい、言い方が違えば、まだマシなのにねえ」
「あんなだから、あいつはすぐにフラれるんだろ」
 俺をよく知る友人たちが、そんな風に呆れているだろう。だがしかし、それなりに自分でも分かっているのだ、が。
 どうしても、弁当屋の息子としては、黙ってはいられないのだ。我ながら、変なプライドだとは思う。
 友人からのお小言は、この後に改めて聞くことになるのだった。

6/3/2024, 3:28:25 AM