あなたとわたし
揺るがない北極星と漂う変光星。
嵐を射抜く灯台の光と冬空の下のマッチの火。
寂寥の砂漠の中のオアシスと砂利道の水たまり。
心奪う峰々の稜線と砂場の崩れかけの山。
朝日を迎える小鳥の歌声と無秩序な虫けらの羽音。
ルーブル美術館と田舎の学校の文化祭。
帝国ホテルのインペリアルパンケーキ いちご添えと88円のジャムパン 値下げ品。
血統書付きのロシアンブルーとやさぐれた野良猫。
……ぐらい、君と僕は世界が違う。それはわかってる。でも、好きだ。付き合ってください。
……えっと。言い過ぎでは?そんなに差はないと思うけど。
いや、ある。君は素晴らしい人です。
ありがとう。
で、返事は?
……はい。いいですよ。
ホント?ホントに?やったあ。
でも、ひとつお願いが。
なに?
さっきも言ったけど、そんな差はないから。そこだけは考えを変えてね。
例えるなら?
例えるなら?えっと……。自分の尻尾を追いかける猫とベロをしまい忘れた猫。
どっちがどっち?
だからさ、どっちも変わらないってこと。気にし過ぎ。
ううむ。尻尾を追いかけるのとベロのしまい忘れ……。いったいどっちがだめなのか……。
いやいや、だからさ、そんなふうに考えないで。わたしたち、どっちが上でも下でもないからね。完全にイーブン。
いや、しかし。
もう。いいから。ラーメン屋さん、閉まっちゃうよ。早く行こ。
11/8/2024, 12:11:42 AM