青く深く
モーターボートのスピードが増して、ハーネスに付いたパラシュートが上昇してゆく。
私はボートの中で笑っている子供たちと、心配そうな夫に向かって手を振る。
風を孕んでぐんぐん昇ってゆくこの感じ、空に吸い込まれそうな、海に飲み込まれそうな。
ちっぽけな個の自分が深い青色に溶けてしまうこの感覚を、私は以前にも知っていた。
天の羽衣を失う前、空を飛べたずっと昔のことだ。
家族旅行に来てパラセーリングをやってみたいと言ったら、夫はむきになって反対した。
不安げなその顔を見て初めて、私の羽衣を隠したのはこの人だったのではないかという気がした。
でも、だったら、今さらどうする?
長年の嘘を許せる?
空高く一人で浮かんでいても、もう私は完全な自由と孤独を感じることは出来ない。
愛情というロープに繋がれているからだ。
答えはまだ先に、今はただゆらりと青に溶けていよう。
6/30/2025, 4:25:53 AM