かたいなか

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「Love、Heart、Cute。随分とまぁ、カワイイ系の英単語と遭遇しやすい」
スワイプ、スワイプ。物書きはスマホを見ながら、去年のお題、「I LOVE...」を探した。
「書く習慣」は恋愛ネタのお題が意外と多いのだ。

「I LOVE」と言われても、「アイデア」だの、「アヤメ科」だの、あとパックご飯に家電製品しか思い浮かばぬが。某所在住物書きは頭をガリガリかきながら、これで少なくとも10度目の恋愛ネタに苦悩した。
4月か3月末あたりには「My Heart」なんてお題もあったが、もう、何を投稿したやら。

「……で、なに、ビッグラブ? ソゥスイート?」
オタク投稿くらいでしか見かけたことねぇわな。
物書きは「BIG LOVE」を検索して、結果を見て、
それがそこそこ昔から存在する言葉だと知り……

――――――

前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所に、日本在来の花をよく愛する雪国出身者がおりまして、
花に対してまさしく「big love! 」なその雪の人は、名前を藤森といいました。

藤森は都内に息づく在来の、希少で絶滅危惧な植物の一部が、特に自然公園内のそれらが、
適切に保護されていないのを、憂えておりました。
すぐ近くで貴重なランが咲いているのに、除草剤で雑草対策されたり、
あるいは他の雑草と一緒に刈ってしまったり。
なにより昨今の気候変動の影響もあって、都の希少な花の数は年々減少。

それを悲しんでおった藤森を、「世界多様性機構」なる異世界の組織が、
先進世界の技術の粋を紹介すべく、彼等の小さな城、「領事館」に招待したのが前回投稿分。

花にビッグラブな藤森に、異世界人の代表、領事館の館長が披露したのは、コピー/クローン作成機。
ほらすごいだろう、使ってみたいだろうと、館長が藤森にプレゼンします。
何故でしょう? 領事館の館長は、藤森に彼等の――異世界組織の仕事を手伝ってほしいのです。
何故でしょう? 藤森は彼等に――世界多様性機構の異世界人に、できないことができるのです。

機構の敵対組織、「管理局」へのスパイ行為です。
領事館の館長は、なんということでしょう、
藤森を闇堕ちさせて、あるいは心を抜き取って、
機構の思うままに動く、操り人形にしようとしておるのです!……わぁタイヘン。

――「あーあー。行ってしまったわ」
藤森が世界多様性機構の領事館に、行ってしまうことを前々から、占いで余地していた魔女さんが、
喫茶店のアンティークなテーブルの上にカードを広げて、ポツリ、ぽつり。
「先月の今頃から、言っていたでしょう?
このまま信頼を構築できなければ、藤森は『機構』に誘われて、領事館に行ってしまうと」

長いため息を吐く魔女は、「世界多様性機構」の敵対組織に身を置くおばあさん。
現地住民の藤森を心配して、藤森に何度か世話になっている同僚に、「救ってこい」とツンツン、だいたい過去投稿分3月21日頃、
口を酸っぱくして、言っておったのですが、
どうやら失敗した様子。

「この世界に住む藤森には、きっと、多様性機構が持つ技術やアイテムは魅力的に見えるわ。
『使ってみたいだろう』と言われたらおしまいよ。
愛する花たちを守るために、藤森はきっと私達『管理局』の中に潜り込もうとして」
潜り込もうとして、そして、私達に近づくなり、機密を盗むなりして、罪を犯すでしょう。
再度長いため息を吐いた魔女のおばあさんは、
「救ってこい」と突っついていたハズの男性に、
チラリ、視線を向けました。

「『カナリア』に護衛と監視を任せてある」
魔女のおばあさんに目を向けられた男性は、つまり「世界多様性機構」の敵対組織の構成員。
機構が都民を勝手に操り人形にしたり、勝手に他の異世界人を連れ込んだりしないように、取り締まりをしている側の部署のひと。
ビジネスネームを、「ルリビタキ」といいます。

「花に詳しくない俺なんかより、花を愛するカナリアの方が、藤森との信頼も構築しやすいだろう」
ルリビタキは魔女に言いました。
「カナリアで全部解決するなら、最初からそっちに『藤森を機構に渡さないで』と言っているわ」
魔女が3度目のため息を吐きました。

「藤森は俺をまだ信用していない」
「だから信頼を構築なさいと言ったのよ」
「カナリアの方が早い」
「あの子じゃ機構の『暴力』に勝てないでしょ。
それこそ、花のビッグラブのような子なんだから」

「あいつだって法務部特殊情報部門の局員だぞ」
「言い訳しないの。つべこべ言わず、領事館から藤森とカナリアを救ってらっしゃい」
「……む」

ほら。ビッグラブ、マイスイート、とっとと行ってらっしゃい。 夕飯までには帰るのよ。
魔女はルリビタキに手を振って、しっし、しっし。
「あ、そうそう。『呼び鈴』を使われるでしょうから、ちゃんと耳栓持っていきなさい」

今度はマイハニーだのグレイトラブだの、子供扱いされたルリビタキが、ため息を吐く番。
「20分で片付けてくる」
あまり乗り気で無い風に、魔女から耳栓を受け取って、喫茶店から出てゆきました。

「呼び鈴」って、なに? 耳栓?
それは次回の配信お題次第……

4/23/2025, 7:29:40 AM