せつか

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窓についた水滴を指で拭うと、白に塗り潰された世界があった。
深夜だというのにほのかに明るいのは、雪明かりのせいだろう。雪が月光を反射して光を拡散させているのだ。いつもと全く違う景色に息をのみ、しばし見蕩れる。
街の屋根も、街灯も、街路樹も、全てが白に包まれている。街灯にこんもりと積もった雪は、まるでマシュマロだ。三角屋根も雲を載せたように丸く可愛らしいフォルムになって、思わず手を伸ばして触ってみたくなる。

――本当に、触ってみたいな。

ふとそんな事を思ってコートを羽織ると家を出た。
街は静寂に包まれている。ほとんどが眠りについているのだろう。

高いビルの屋上に辿り着く。
吐く息も白く、また降り出した雪がチラチラと暗い空から舞い降りる。
白以外の色を忘れてしまったかのようだ。
眼下に広がる白い雪は、やっぱりマシュマロみたいに見える。
「·····」

冷たいはずのその景色に、無性に飛びこみたくなった。


END


「雪明かりの夜」

12/26/2025, 4:51:24 PM