まだ続く物語
俺が生まれたとき、姓名判断に訪れた神社で
「この子には大きな使命がある」
と言われたらしい。
その後の人生でもずっと俺は、僧侶やら神父やら占い師やらに出会うたび
「あなたには使命がある」
と言われてきた。
あまりにも言われるので、そうか俺には使命があるのか、いつかそれに出合うのか…と覚悟して生きてきたが、思いに反して俺の人生はとてつもなく平凡だった。
子供時代、学生時代、社会人になり結婚し、親となり祖父となってもずっと平凡なまま、変わったことは何もなかった。
そしてついに俺は平凡に死んだのだが、特に思い残すこともないので大人しく霊界の受付に立っていたところ、役人が驚いたように言った。
「おや、あなたには使命があったのですね!」
「はぁ…そんな風に言われてましたが、別に何もなかったです」
「うーむ…」
役人は渋い顔で考え込んだ。
「まずい…非常にまずいです。使命を果たすべき人間がそのままここへ来るのは」
「そう言われても…」
「申し訳ありませんが、一からやり直してもらえますか?」
「ええっ」
そんな訳で俺は再び俺に生まれ変わり、母親に抱かれて姓名判断の神社にいる。
「この子には大きな使命がある…」
それはもう分かったから、どんな使命なのか今度はちゃんと教えて欲しい。
5/31/2025, 12:17:47 AM