『終点』
「お客さん、お客さん」
肩をとんとんと叩かれて、ハッとする。
いつの間にか寝てしまっていた。
「終点ですよ」
抑揚の無い小さな声で私にそう告げる車掌は、無表情で、まるでロボットのようだった。
「す、すみません」
感情が欠落している車掌に少しの恐怖を覚えながら、そそくさと席を立つ。
電車を降りようとドアの前まで行ったところで、私は目を疑った。
「なんだ、これ……」
開いたドアの向こうは、終点の駅などではなかった。
全てのものを飲み込んでしまいそうな闇が、広がっていたのだった。
「終点、死者の国でございます」
私の背後で、抑揚の無い声がそう言った。
8/10/2024, 11:49:59 AM