彼女はいつの間にこんなに小さくなったんだろう。
子供の頃は手を繋いであちこち引っ張り回してくれていたのに、今は子供のように肩も腕も小さくて柔らかい。
豊かな髪に隠れたうなじから、優しい洗いたてのリネンの香りが頭の奥まで刺さる。
彼女の腕が絡んできて、そのまま体勢が崩れてしまった。
「離れて」
自分は必死に抗う。
ベッドの上でこれはまずい。彼女と自分の体重を支えるので精いっぱい。まずはなんで彼女が抱き付いてきたのかが分からない。
おかしくなりそうな香りで背筋がぞわぞわする。
「もっと、あなたに触りたいんだもん…」
彼女の返答にふが、と変な息が漏れてしまった。
ますますのしかかってくる彼女の身体の丸っこいこと。雨で冷えた身体にじんわりと染みる。
「最近避けてるでしょ、私のこと」
「避けてない…」
「うそ」
彼女がぎゅうと抱きしめてきた。頬が触れてすごくいい匂いがする。
理性が飛びそうだった。毎日どれだけ彼女に対して抑え込んでるか知らないのだろうか。腹が立つ。
「自分でもよく分からないんだけど…。私じゃだめかな、私じゃ頼りないかな。あなたの側にいたいのよ」
俯いて、ぼそぼそと耳に届く甘い声。
細い腰が当たる。一気に頭に血が登った。
少し前に仲間が言っていた事を思い出す。「あの子は待ってるのよ」とか「不安なんだろうな、なんで安心させてやらないんだ」とか、当時は本当に本当に意味が分からなかったんだ。
今になって一気に燻って、支配欲のようなものがもたげてくる。自分以外に取られてしまいそうだからとか、そんなんじゃない。単なる野性的ななにか。失いたくない。岩場に踏み荒らされそうな花が咲いている。それを毟り取るのは自分ではいけないはずなんだ。
「君は、そんな勘違いししそうなこと、誰にも、特に男には言ったらダメ…だと思う」
「あなたにしか言わないよ、なんでそんな話になるの」
「ダメだよ…ぼく最近おかしいんだ、頼むから離れて!!」
こんなに警告したのに、どうして泣きそうな顔で見上げてくるんだ。息が上がってくる。君のことをめちゃくちゃにしそうで怖い。
「わたしは、離れない」
「なんで…なんで…」
「好きだからよ!なんで分からないの」
強情な唇が、嘘みたいに可愛い。自分の息で彼女の前髪がふわりと浮く。
「知らない、からな…」
急に余裕がなくなって自分じゃないような言葉が出てくる。
身体は冷え切っているのに、不思議な熱が頭の芯を奪っていった。もう熱くて身体中の息が上がっていく。
気が急いて、いいよと言った優しい頬に口づけた。涙の味が少しして、僕らは初めてのキスをする。
息が甘くて、腹がゾクゾクするほど堪らなくてもう一度唇を塞いだ。なんて薬なんだろう。頭がおかしくなりそうだ。
「胸が高鳴る」
3/19/2026, 11:24:32 AM