ここから見ると、街の境界がはっきり分かる。
色とりどりの光が集まり、街の輪郭をくっきりなぞっているからだ。酒場のネオン、信号機、受験勉強中の学生の部屋、工事現場の警告灯、走り抜ける無数の車·····。一つ一つの灯りは小さくても、これだけの数が集まればそれは街全体を浮かび上がらせる。
この街のランドマークと言われるタワーのてっぺん。
その壁にもたれる男が一人。
「不夜城、とはよく言ったものだ」
その視線をほんの少し動かせば、途端に明かりは途切れて真っ暗な闇が広がる。
その闇の中にも命は生きているのだろう。
街の形をした光から溶け落ちるようにして出てきた光が、細く長く伸びながら闇の中を流れていく。
あの光の主が向かう先には、きっと大切な者がいるのだろう。煌びやかで騒々しい街と、真っ暗で静かな闇。
「どちらが心地いいんだろう?」
END
「街の明かり」
7/8/2024, 12:20:03 PM