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「言葉はいらない。ただ…」

ようやく雨が止んだ。ご飯にはまだ早いけど縁側でビールを開ける。少し飲んでおかないと話す勇気が出ない。

何でも話すあなたと言葉にしなくても察してほしい私と、いつも噛み合わなくてけんかばかり。でも今日はちゃんと話さないといけない。

「ただいま、どこ?」

いけない。いつの間にか暗くなっていた。

「縁側」と声を掛けるが動けない。

「どうした?」

「あのね」

言いかけて言葉に詰まる。

「いいよ、後で。着替えて来るね」

トントンと2階に上がりクローゼットを開ける音がして、着替えている気配を感じる。嫌だなあ。離れたくないな。着替え終わったのか顔を洗う音がする。ごめん。お風呂の支度しておけばよかった。またトントンと階段を降りてくる。

「ご飯作ろうか?」

「もう出来てる」

「どうしたの?」

隣に座って顔をのぞき込まれる。そうだよね。何でも話してくれるし、何でも聞いてくれる。だからちゃんと話さないと。でも、言葉が出てこない。言えない言葉が涙になって頬を伝う。

そっと胸を包まれる。

「もしかして?」

ただ頷く。

後ろからそっと抱きしめられる。ずいぶん察しが良くなったね。乳房に手が伸びてやさしく揉まれる。あと何回こうしていられるんだろう。まだ何も言わないで。ただもう少しこのままでいて。

8/30/2024, 9:32:59 AM