水上

Open App

遠くに見える君の背中を追って、今どんなに歩みを早めたところで、現実がそんなに甘くないことは知っている。たとえ背中が近付いても、時間は縮まらない。

1年。
大人になれば気にならないような些細な時間だと分かっていても、今の僕にはその時間の差が重たかった。
あんたのいない1年を、この学校でどう過ごせばいい。1年後、僕が入学する頃に、何かが変わっていたら?
ジリジリと、胸の焦げるような感覚がずっと拭えない。

「先輩、今帰り?」

近付いた背中に声をかけて、隣りを陣取る。当たり前のように並んで歩く僕たちの肩書きは、まだ先輩と後輩。

屈託のない笑顔と、時々突拍子のないことを言い出す無茶苦茶なところ。学年首位の座を維持し続ける案外真面目で賢いところ。

「今日、進路相談だったんでしょ?」

この人の優秀さはちゃんと分かってる。でも、僕も手を抜くつもりは微塵もない。

「ねぇ、僕は勝手に追いかけるから。必ず追い付くから。だから、どんどん先に進んでみてよ。……絶対捕まえるけどね」

〉君の背中を追って

6/21/2025, 10:33:36 AM