眠り子

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ゆずの香り

「君は、ゆずの香りは好きかい?これを嗅ぐと冬が来たなぁって思うんだよね」
黄色い球体状の果実を腕いっぱいに抱えた彼は、屈託のない笑みを私に向けながら語っている。
「かおりをかぐだけで、ふゆっておもうの?ふしぎ」
「香りは記憶を繋ぐヒントになるからね。君がこの香りを嗅いだ時、そういえばこんな話したなって思い出すヒントになってほしいな」
よかったら嗅いでみてって1つ渡される。
すっきりと甘い香りが鼻の中に広がっていく。
「よくわからないけど、なんだろう。おちつくかも」
なんだか、彼みたいだ。

こうして、私と彼の冬至は過ぎていった。

12/23/2024, 4:18:23 AM