文スト呟き 🕊🐀 🐀🕊

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『おい、お前が新しい隊員か』

福地に引き抜かれ猟犬本部に来た初日、
最初に声を掛けてきたのは汗臭い匂いの男だった

「汗臭い……えぇ、そうですよ。貴方が誰だか存じませんが風呂ぐらい入って来たらどうです?」

普段通り、悪態を付いてやる

然し、心音は変わらず不快を表したりしなかった

寧ろ、面白いものを見つけたような、
わくわくとしているようなそんな心音で
此方が面食らってしまった


『凄い顔をしているが…大丈夫か?腹でも壊したか?』

いっちょ前に嫌味かと思ったがどうやら本気で心配しているようだ


「いえ、元々こう云う顔ですので」


そう言うと
『そ、そうか…それは悪い事をした』と返ってくる


「…… そんな訳無いでしょう、莫迦ですか💢」

喧嘩を売っているんだろうか?

取り敢えず一発ぶん殴ってやろうかという衝動を抑え、通り過ぎようとすると腕を掴まれた

『莫迦ではない、俺は末広鐵腸と云う。
お前の名は?出来れば漢字も教えてくれると助かる』

「条野採菊と言います。
 採る菊で採菊ですよお莫迦さん」

『そうか、採菊と言うのか』

「なんか馴れ馴れしくてむかつくので名字でお願いします」

『む、、分かった…
では俺の事は鐵腸と呼んでくれ。之から相方として宜しく条野』

「はい、宜しくしたくはありませんがお願いします…って相方ですって??」

この男は何を言っているのだろうか、と聞き返す

『嗚呼、相方だ。お前と組むように隊長から仰せ仕った』

…何を考えているんだろうか、入って早々相方を
指名して組ませるとは

真逆、信用されては居ないのか

そんな事をぐるぐる考えていると、前の男が動いた

『そんなに難しい顔をするな。皆の足を引っ張らせないようにするから』

ドヤ顔が見えるような言いぶりでそう放つと、
頭をわしゃわしゃと撫でてくる大きな掌


思いの外優しい声色と、
体格に見合わぬ優しい手付きで不覚にも
心拍数が上がったのを感じた

慌てて彼から離れると、

『撫でられるのは嫌いだったか?猫のようでつい』

と言われ、心拍が上がっている事には気付かれていないらしくひとまず安心する

『俺はお前が気に入った。之から仲良くしてくれ』

楽しそうにそう言って去って行く姿を見て

不思議と不快感は無く、ただ自分の頬にじわじわと熱が集まるのを感じた








🍐🍮 てつじょ
お題 : 初恋の日

5/8/2024, 2:37:27 PM