5,「終わりにしよう」
剣の切先を向ける。国中の願いと呪いを背負って、魔術師たちが文字通り命を込めて作り上げた剣。ひどく重いけれども、この剣がなければ倒せない。恐ろしい魔王は倒せない。
「……」
男とも女とも、老人とも子供とも、そもそも生きているのか死んでいるのか。全ての情報が遮断された存在。人類の敵。その被害は人類だけに留まらず、植物や動物にまで及ぶ。長らく恐怖の象徴であった魔王を倒すために、今日、人類は技術の結晶を勇者に託した。
ただ、何故か。
「──終わりにしよう、魔王」
僕には君が、泣き出しそうなただの女の子に見えたんだ。
7/16/2024, 7:25:00 AM