放課後、夕日に照らされる屋上で彼に告白された。
私は嬉しくて、涙ながらに「はい。」と答えた。
彼は高身長で、イケメンで、女子に人気があって、元カノもたくさん居た。友達には、そんなチャラい男やめなと何度も言われた。だけど、私はずっと憧れだった人とお付き合いできただけで幸せだった。付き合ってからの彼は、驚くほど私に関心がなかった。私から話しかけないとまず話すことは無いし、デートに誘われることもない。メールでのやり取りも、私が送ったら返信が返ってくるだけ。私の中に徐々にある疑問が浮かんだ。
彼は本当に私のことが好きなのだろうか。
それは私の心の中でどんどん膨らんでいき、やがて確信へと変わった。
彼は私を落胆させるために付き合ったのだ。自分の顔だけ見ている女たちに、自分の中身を見せつけているようだった。彼は初めから私のことを好いてなどいなかった。そんな彼の心情に気づいて、私は彼をもっと好きになった。それは彼の優しさであると私は思うから。
それから私は彼に積極的に接し、一緒に帰ったり、デートに誘ったりした。私のことを好きにならなくても良い。ただ私はあなたの内面まで見ていることを知ってほしかった。
ある日、彼に放課後、屋上に来るよう言われた。嫌な予感がした。屋上の扉を開けると、夕日に照らされた彼がいた。告白された、あの日と同じ情景。ただひとつ違うのは、彼の顔が神妙に歪められていることだ。彼が口を開いて、
「別れよう。」と言った。
私はいつかこんな日が来ると思っていた。彼が私を好いていないこと、分かっていたはずなのに、目からはとめどなく涙が流れた。それでも涙を拭いながら、
「分かった。今までありがとう。」と震える声で答えた。
私は理由も聞かずに踵を返した。だって聞くまでもなく、理由なんて予想できたから。しかし、体が引っ張られる感覚に足を止める。彼が私の腕を掴んでいた。
「待って、ごめん。泣かせるつもりはなかったんだ。」そう言われて、頭が混乱する。彼の顔はなぜか紅潮していた。
「俺は今まで君に対して、とても不誠実だったと思う。本当は君のこと好きでも何でもなかったんだ。でも、君と付き合ってから、君は俺を本当に愛してくれているんだと分かった。だから、もう一度ちゃんと言わせてくれ。」
私はあまりに突然のことで理解が追いついてこなかった。彼は、
「君が好きです。付き合ってください。」
と言った。
私はこの一言で、さっきとは比べ物にならない量の涙が溢れ出てきた。
「はい。」
ここから始める、私たちのもう一つの物語。
10.29 もう一つの物語
10/29/2024, 5:45:47 PM