春爛漫
とある休日の昼下がり。
あなたは庭の花壇に咲き誇るラベンダーたちにジョウロで水をやっていた。
ラベンダーはわたしが一番好きな花。あなたと一緒の家に住むことになった時に前の家から持ってきたものだ。
開いた窓からふんわりとレースカーテンを巻き上げて、ラベンダーのいい匂いが入り込む。
巻き上がったカーテンに透けるあなたがあまりにも綺麗で、少しの間時が止まったように感じる。
わたしがあなたを見つめていると、あなたはそれに気づいて少し微笑む。
あなたの足元にあるラベンダーに負けないような美しい笑顔で。
幸せだ、そう思う。
あなたが笑っていて、生きていてくれるだけで心から幸せだと思える。
あなたにはずっと笑顔でいて欲しい。わたしのために怒ったり悲しんだりしてくれるのも嬉しいけど。
あなたには笑顔が一番似合うから。
どんなに辛くたってあなたの笑顔を見ればなんだってできる気がするんだ。
その笑顔はわたしが、あなたを幸せにできているって証拠だから。
だから、わたしの最期にはあなたの涙が見たい。
わたしがいなくなってしまう事に涙を流すあなたの顔が見たい。
わたしが居なくなることで涙を流すあなたは、わたしが今まであなたを幸せにできていたっていう証拠だから。
そして私が居なくなった後、街中でラベンダーを見るたびに、春になって花が咲くたびにわたしを思い出して泣いて仕舞えばいい。
そういうのも、愛だから。
花に囲まれるあなたを眺めながら1人夢想する。
わたしの夢。
あなたが笑顔いてくれる事。
あなたがわたしを思ってくれる事。
それを叶えるためならなんだって出来る。
でも一つわがままを言うならば、
夢が叶ったその時の世界に、わたしたち以外、誰も居なければいいのに。
3/28/2025, 3:20:12 AM