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声が枯れるまで

「雨は止んだ?」

振り返ると掛け布団が動いて少しだけ持ち上がっていた。自分で見ればいいのにと思いつつ、ベランダ側の窓を開けて雨音を聞かせてやる。

「まだ」
「そう」

しゅると布団を持ち上げていた白い指先が引っ込んで、布団が再びこんもりとした山の形に戻る。私は低気圧に影響を受けることは無いが、相手は真逆の体質で雨が近づく度に頭痛を引き起こしてしまう。薬を貰っている筈なのに、負けた気がするから飲みたくないらしく、耐えられるギリギリまで服用したがらない。
久しぶりに2人が一緒の休み、本来であれば新しく出来たカフェで新作のケーキを食べる予定だった。しかし、蓋を開ければ土砂降りの雨。私は昨日の夜から何となくこうなりそうな気がしていて、お泊まりしたいと相手に伝えて今の状態である。

「……ごめん」
「なんで謝るの?」
「予定が台無しになった」
「天候は私たちがどうこう出来るもんじゃないから、仕方ないよ。また今度一緒に行こう」

布団の隙間からずぼっと顔を出した相手の頭を撫でた。湿気のせいでもふもふになる髪が嫌いらしいが、触り心地が楽しいので私は好きだ。私は布団の上から相手を抱きしめる。

「ココアを買ってきるんだけど、飲む?」
「鍋で作るやつ?」
「うん」
「飲む。新しく買った蜂蜜があるから一緒に作ろ」
「そうしよう」

10/22/2024, 8:35:29 AM