《信号》
「なんで、泣かないんだ、なんで笑ってるんだよ」
うるさい、うるさい、うるさい、うるさい、
俺に泣く資格なんてねぇんだよ
うるさい、何も知らないやつが口をだすな
あいつが、死んだのは俺のせいなんだ、
俺はあいつに救って貰えたのに俺はあいつを救えなかった
あいつに救難信号に気がついて助けてもらえたのに俺はあいつの救難信号に気が付かなかった
俺に泣く資格なんてない
あるのは、あいつが綺麗だと言っていた顔でいることだけ
笑え、笑え、笑え
あいつへ俺ができるのはこれだけだ。
どれだけ詰られようと、殴られようと、それ以外俺には許さない。
ギィ、ギィ、体の中から何かが軋む音がする。
笑え、笑え、笑え、
腹が立った。
仲がいいやつの葬式でただただヘラヘラと笑っている奴が。
だから、襟を掴んで殴った。
それでもアイツは笑ってた。
だから余計に腹が立って、もう1回殴ろうと腕を振り上げた。
だが、その腕を振り下ろすことは出来なかった。
気がついてしまった。
アイツの目には何も映っていなかった。
ただ、何かを求めるように揺れていた。
空っぽだった。
笑顔にもなんの感情ものっていなかった。
アイツの目からほろりと一筋涙が落ちた。
アイツはそれに気が付かず、ただ笑い続けていた。
9/6/2025, 4:12:31 AM