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大きな塔を見上げた。

「上に行くと、いつもは見えない景色があるのよ」

おばあちゃんは私にそう言って大きな塔の地下に繋がる階段へと消えていった。

「おばあちゃん待って。」

私の呼び止めた声だけが大きな塔の中でこだました。何処かも分からない場所に、とりのこされる。私はどこへ迎えばいいの?
地下へと繋がる階段は真っ暗で塔のてっぺんにある、たったひとつだけの窓から漏れ出ている光は届かない。
おばあちゃんについて行く前に、私が見えない景色を見てみたい。

私は階段を登り始めた。ああ疲れた。私はここまで歩けた。やっとてっぺんだ!私は窓から暮らしている街を見下ろしていた。なんだ、こんな景色いつも見てるよ。私の期待していた景色じゃない。
私はおばあちゃんについて行くことにした。後ろを振り向くと、そこに階段はなかった。



お母さんが私の肩を揺さぶる。

「紀子!紀子!起きて!起きなさい!」

「……どうしたの?お母さん今日は学校はお休みだよ。ゆっくり寝たいよ」

「おばあちゃんが病院で亡くなったのよ。準備があるから手伝って。」

「うん」


多分おばあちゃんは、塔のてっぺんには登れなかったんだ。

9/10/2023, 10:25:13 AM