KAORU

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「なあ、姫子。クリスマス俺と一緒に過ごそうぜ」
「……!」
 相変わらず天野くんはオープンだ。周りの目などお構いなしに誘ってくる。
 今も校内の廊下ですれ違いざま。周りの男子がおおー、勇者だねーと冷やかしていく。 
「ちょっと。声が大きいよ、何なのいきなり!」
 物陰に押し込んで抗議する。
 でも彼はけろっとしたもので、
「今から誘いますって宣言してから誘う奴いる?受けるー」
「……あのねえ」
 頭痛くなってきた。
「すまんすまん。姫子と冬も一緒に居られるの、なんか嬉しくてさ。盆と正月がいっぺんに来たみたいなんだよ。浮かれてごめん」
 あんまりストレートに言うものだから、私は言葉に詰まる。
 天野くんは笑った。
「クリスマスなのにおかしいよな。でも一緒に居たいのは本気。予定ないなら俺とどう?プラネタリウムとか」
「……天野くん、それって私に織姫の頃の記憶取り戻させようと、狙ってるでしょ?」
 そう突っ込んであげると、あはは、それは裏読みすぎ、と笑い飛ばされた。
「まぁ前向きに考えといてよ」
 じゃな、と手を振って行ってしまう。
 ほんとにもー強引なんだから。私はため息を吐きながら、彼を見送る。
 まぁ天野くんとプラネタリウムで星を見るのもいいかなと思った。
 織姫の記憶がどうこうと言うより、純粋に一緒に過ごしてもいいかなという気持ちになっていた。この、開けっぴろげな彼と。
 彦星の生まれ変わりと信じて疑わないひとと。

#冬も一緒に

12/18/2024, 10:00:34 PM