unaru

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帰宅したときには、既に腹を見せて浮かんでいた。
何も知らないエアーポンプは泡を吐き出し続けている。逆さまのオレンジの体。大きな目ん玉を凝視する。
「可燃ごみだってさ」
役所で貰った分別マニュアルを片手に声をかけるも返事は無い。どうせなら丁寧に捌いて食ってやろうか。そう考えたけれど、あの世で泳げないと可哀想だからやめた。
「収集明日じゃん」
傍にあったコンビニの袋の中を覗いたら、昨日食べたおにぎりの包装紙が見えた。どういう訳か急に胸の奥が熱くなって、視界が滲んできた。
「あんまりだわ」
返事は無かった。
エアーポンプはまだ泡を吐いている。

(突然の別れ)

5/19/2023, 5:11:39 PM