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書く習慣:本日のお題「見つめられると」

見つめられると落ち着かない気持ちになる。
何か言いたげだな、と思う。
何がほしいのか、何を訴えかけているのか、脳みそフル回転で考えてしまう。

犬の話である。

実家の茶色いダックスフントは、要求によってアクションが異なる。

本当に切羽詰まっている時は、相手の目を見ながら吠える。吠えて吠えて吠えまくる。「同じ言葉が話せたらいいのに!」みたいな顔をするので、これは本犬的に相当やばいなと察する。たいていはトイレで、ごくたまに家族の誰も犬にご飯をあげていないパターンがある。

人間が食べているご飯やお菓子が気になる時も声を上げるが、吠えるのではなく唸る。「フウ」と「グウ」の境目みたいな発音で、喉の奥から鼻に抜けるような声である。本当に欲しい時はよくよく見るとぷるぷる小刻みに震えていて、かわいい。

また、私があまりに起きてこない日の午前中は、階段の下から踊り場をじっと見上げて、一定間隔で「ワン。……ワン」と吠えて呼ぶ。ようやく目を覚ました私が階段を降りていくと、裸眼でもわかるつぶらな瞳で真っ直ぐにこちらを見上げた犬が、体ごとブレブレになりながら尻尾を振って出迎えてくれる。

犬はひととおり構われて満足すると、定位置である窓辺のクッションに座って庭の監視に精を出す。私はリビングのソファで映画を見ながらお茶を飲み、「お茶っ葉変えなよ」と母に呆れられる。

母が出かけて静かになり、ふと気づくと犬が足元に座って私を見上げている。
まだ昼ごはんには早いし、トイレに行きたいなら悠長に見上げてないで吠えるはずだ。

「どうしたの?」と犬に訊ねると、目をくりくりさせて小首を傾げる。「遊ぶ?」と聞くと逆方向に首を傾げる。「好きなおもちゃ持ってきて」と犬用のおもちゃ箱を指差しても、犬は動かない。

「お散歩?」と聞いてみると、また小首を傾げる。「お散歩行く?」ともう一度聞いて玄関へ続くドアを開けてみても、犬は動かない。

犬を抱き上げてソファに乗せると、ソファに出しっぱなしだったおもちゃをくわえて尻尾を振りながら私の膝に乗ってきた。どうやら、私がソファでテレビを見ているのと同様に、ソファでおもちゃを噛みながら過ごしたかったらしい。

人間の都合で可愛がるためや歯磨きのために抱っこすると噛むが、犬の要求を叶えるための抱っこなら噛まない。

犬を観察するために見つめていると、犬も私を見つめてきて、ゆっくりと瞬きした。

3/28/2026, 1:26:03 PM