「そういえば、お前は専門に行くんだっけ」
お昼休み、いつもふざけてばかりの友達が急に真剣な顔をして話し始めるものだから、明日は槍でも落ちてくるのかと思った。
「そうだよ。お前は大学だっけ?しかも都内」
「そうそう。上京して一人暮らしすんだ」
へぇ、と気のない返事を返す。俺らは昔から田んぼばかりの田舎の学校に通っていた。昔も今も虫が多いとかコンビニやゲーセンが近くにないと愚痴を吐いていたが今ではすっかりこの街の匂いが好きで、結局家から近い専門学校に通うことにしたが友達はいつも「都会に行きたい」と煩かったから、納得はしていた。
「一人暮らしとか絶対向いてないよ」
「うるさいな」
本当のことなのに。気がついたら随分遠くに行ってしまった。
もう1ヶ月も経たないうちに東京の方に行ってしまうと聞いたのは、今から1年も前のことなのに。その時はまだ試験の結果が決まっていなかったから行く"かも"だったが。
「そっか。上京しちゃうんだなあ」
声に出してみるとあまりにも弱々しくて、おかしくて笑ってしまう。一緒に弁当を食べる日はいつまで続くのか。自炊の連絡してくれるのはいつまで続けてくれるのか。
そもそも、連絡してくれるのかすら分からないのに。
季節はすっかり冬。吸い込む空気が冷たくて、ニットを着ても寒い。
寒いのは嫌いだ。でもお前の近くにいると心は温かくなるんだ。
このまま、春なんて来ないでいいのに。
「時を止めて」
11/5/2025, 1:31:54 PM