水晶

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『はなればなれ』

「各自準備が出来次第、ダイブ開始!」
上空5000mの雨雲の中、漂う水蒸気を我先に取り込み雨粒となったものから地上目掛けて落下する。あるものは山へ、あるものは田畑へ、あるものは街へ。行く先は様々だ。

「ねえ、おじさん。ボクはこれからどうなるの?」
小粒が不安気に私に聞いてきた。
「おや、雨になるのは初めてかい?君はこれから大きな雨粒になって下界の何処かに落ちる。」
「そこにおじさんはいる?」
「さあな。ここにいる粒達は皆、下に落ちて一旦はなればなれになる。だが川を伝って海へ行き、そこから空に戻ってくるんだ。また皆に会えるよ」

「本当に!?」
小粒が嬉しそうに言った。
「…さて、私はそろそろ準備が整ったようだ。雨になったから先に行くよ。」
私は小粒を残して下界へと落ちて行った。

11/17/2024, 7:35:31 AM