立花涼夏

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 日傘を差して立っていたら、一匹の猫が足元に擦り寄ってきた。
「あら、こんにちは」
 真っ黒な猫はじぃっとこちらを見つめ、やがてしなやかにその腰を床に落とした。
「今日も暑いわね」
「なぁん」
「近くに日陰でもあったらいいのにねぇ。あなたもそんなに真っ黒じゃあ大変でしょう」
「なぁご」
 分かっているのか、いないのか。人工の影の中で、猫は大きくあくびをした。ゆらりゆらりと大きくしっぽを揺らし、気持ちよさげに目を細めている。
 空をゆっくり流れる雲を、目を細めながら眺めてみる。穏やかな時間が過ぎ去っていく。
「なぁん」
 しばらくして、猫が鳴いた。その目線の先で一匹の白猫が優雅に歩いている。黒猫はたたっ、と素早い動きで影の中から飛び出し、白猫に擦り寄った。
「あらあら、あなたも待ち合わせだったの?」
 黒猫は一度だけこちらを振り返ると、そのまま白猫とともに歩いて行ってしまった。
「ごめんね、待たせちゃって」
 横から友人の声が聞こえた。まだ待ち合わせの時間より早いのに、律儀な人。
「大丈夫よ、お友達が一緒にいてくれたから」
「お友達?」
「ええ、そう。仲良くなったの」
 不思議そうに首を傾げる友人に、一つ忍び笑いを零した。

お題:日陰

1/30/2025, 7:42:30 AM