《夢を見ていたい》
今日もしあわせな一日が始まる。
朝起きて朝食の準備をしていると、お前がのんびりと起きてくる。
その様子をみるに今日は悪夢をみなかったらしい。
悪夢をみたときのお前は足音を荒く、1秒でも早く僕を確認しようと部屋に飛び込んでくるのだから。
「しあわせだな」
そう言いつつ、身長が少し低いお前は背伸びして俺の肩に顔を埋めた。
「お前はいつもそれだね」
そうお前の腕を優しく撫でると、更に力が強まった。
「当たり前だろ‼︎」
いつものようにそこからいかに今がしあわせなのかという長いお前の話が始まる。
まるで口説いているようなそれに最初は照れていたものの、今ではすっかり聞き流せるようになった。
そんな僕の様子に気が付かずに熱弁を振るうお前の顔はいつもとても嬉しそうで。
だから決まって僕も「君と一緒だから楽しいよ」と言うお前の言葉に同意を返す。
するとお前は顔を少し赤らめて黙るのだ。
そしてそのまま頭を僕の肩に擦り付ける。
「まぁ、どうしても夕飯のシチューをご飯に掛けるのは理解出来ないねー」
そうお決まりのように返すと、口を少し尖らせて拗ねたように僕の肩に置いた顎を軽くぐりぐりと動かす。
それが僕は擽ったくて。
止めろと頭を撫でると、ご機嫌になる。
正直それに味を占められている気がしないでもない。
そんな何でもない日をいつまでも過ごせることを祈っている。
男は毎晩祈っている。
自分の罪が永遠に赦されることはないことはわかっている。
だが、どうか、どうかまだこの優しい夢を見させて欲しいと。
このぬるま湯に浸からせて欲しいと。
明日もまた君としあわせな一日を過ごせることを。
切に祈っている。
1/14/2026, 9:43:16 AM