少し空いた窓からの風は、熱で火照った身体を、冷やしてくれた。神無月友矢は、ベッドに上体を起こし、外の景色と弟が来るのを見ていた。彼の病室から病院の裏手と駐車場がよく見えた。友矢は、生まれつき身体が弱く、子供の頃から入退院を繰り返していた。中学になって一学期の終わりに学校の健康診断で異常が見つかり、長期の入院になった。栗色のさらさらとした髪と、くりくりとした大きな榛色の目と色素の薄い肌をしていて、小ぢんまりとした姿なので、母性本能を擽ると女生徒達によくもてた。
意味無い。もてた処で、何時、命が尽きるか分からないのに、ツマラナイことだなと。
「おい、入るぞ」軽いノックの音と教会の鐘の音のような声と共に、美しい弟が現れた。
8/3/2023, 1:44:18 AM