雲一つない晴天に目を細めカーテンを閉める。僕が外に出られなくなって一年ほど経ったのを、やけに暑い室温で思い出した。暑いとぼやくと君はテーブルにあったリモコンに手を伸ばし、エアコンを付けた。
「...怒ってない?」
何故今聞いたかは分からない。ただ、一年間ずっと文句一つ言わず僕のお守りをする理由がずっと気になっていた。だから無性に聞きたくなった。
僕は心を悪くしたせいで、日差しを浴びると吐き気がするようになった。外にも出られずろくに生活も出来ない僕を、君が何故か甲斐甲斐しく世話するからここまで生き延びているけれど。
「何に怒るの?」
「病気が何時までも治んないこと。外に出られないこと」
「そんなん仕方ないじゃん」
「怒ってるか怒ってないか、どっちか」
「そりゃ怒ってるよ」
君は考える素振りも無く、そう答えた。僕は答えに傷付いている自分を無視して続きの文字を待った。
「一番近くで君を見てきたのに、あたしはいつまでたっても君を助けられない。だから焦ってるし怒ってるんだけどね、それ以上に君に逃げられるのが怖いの。頑張れる理由はね、君とまた外でお花見とかしたいから。だから嫌われたら本末転倒デショ」
ダサいね、なんて言って笑う。それがいつもより何処かぎこちなかった。この違和感は、僕が言葉を素直に受け取れないせいで何を言われても大目玉を食らった気分になるのを知っているからこういう話し方なのだろう。
それでも自虐なんて君らしくないからもやもやして仕方なくて、そんなことない、と言い返そうとした。顔を上げると君と目が合った。僕は怖くて君の目を直視出来たことなんてなかったのに、君の視線はいつも迷いなく僕へ差していた。これは僕の信頼を全て勝ち取った君だから許されること。
久しぶりに君の目を見た。
僕が唯一浴びれる日差しだ、と安心感が増すだけだった。
#日差し
7/2/2023, 12:38:13 PM