いぐあな

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300字小説

気持ちは同じ

 書斎で出版社からの連絡を待つ。ベストセラー作家だった妹が亡くなったのが五年前。その後、妹は心残りのせいでライターだった姉の私に取り憑き、私は彼女との才能の差に打ちのめされながら、私の名で彼女の作品を発表してきた。その結果が解る。
『先生! 今年の直谷賞は先生の新刊です!』
 スマホの向こうで担当が叫ぶ。
『やったわ! ありがとう、姉さん!』
 声と同時に妹は離れ、彼岸に旅立っていった。

 あれから数年。私は作家として執筆している。本の売上も減り、連載も減ったが、彼女が憑いて気付いた『書きたい』という溢れる気持ちを大切にして。
「そのうち、びっくりするような本を書いてみせるわ」
 妹の遺影に笑み、今日もキーボードを叩く。

お題「溢れる気持ち」

2/5/2024, 11:53:49 AM