—箱の中の悪戯—
僕が所属している演劇部には、いつも悪戯をしてくる女子がいる。
「中には何が入っているでしょー?」
「……」
机を僕の机にくっつけて、向かい側に座った彼女が言った。黒い画用紙に覆われた、クエスチョンマークが付いている四角い箱を机に置き、ニヤニヤとこちらを向いている。
ブラックボックスというやつだ。演劇で稀に使う道具で、昔の先輩が作ったものらしい。四十センチの立方体の中身は、こちらからは何も分からない。
「手、入れてみて!」
彼女が悪戯しようとしている事は直ぐに分かった。恐る恐る手を横から中に入れる。
その瞬間、箱に入れた手が掴まれた。
「掴まえたっ!」
「うわっ!」
間抜けな声を出してしまった。それを聞いた彼女は、口元をおさえて肩を振るわせて笑った。
「びっくりした?」
僕はいつか彼女に仕返しをしたいと思う。それがいつになるかは分からないけれど。
お題:秘密の箱
10/25/2025, 2:24:08 AM