私がいないと生きていけない程、儚い存在だったのに。
12月になり、乾いた空気に自分の白い息が映る。
私の前から、君は飛び立ってしまった。
まだ木々が色づく前の、秋口の頃に君にであった。
玄関の真ん前に、巣から落ちたであろう君にであった。
このまま見殺しにしてもよかったけれど、私は羽も生えていない君を両手で救った。
へなへなで、頭を重そうにうにょうにょ動いて、でも少し温かい、すぐに壊れてしまいそうな儚い君。
私は、そのまま役所に連絡をして、君を育てた。
空の飛び方は教えてあげれないし、エサの取り方も教えてあげられない。
ただ近くで、確かに大きくなる君を私は見ていた。
たまには日光浴をさせ、たまには水浴びをさせた。
その日は、ようやく近所の銀杏の木が黄色く色づいてきた小春日和だった。
外の空気を入れようか、と、窓を開けたその時だった。
「……え?」
君は、機会を伺っていたのだろうか、自ら部屋から飛び立った。
力強く、バサバサと音を立てて。
私は、まだ君と暮らしていたかったけれども、君はもう、私の助けは要らないほど大きく育っていたようで。
少し高い位置にある電柱に、君は止まる。
これが私と君の適切な距離なのだと、私は悟った。
もう君と別れて一ヶ月。
私と君との距離は縮むことはないだろうけれど。
落ち葉となり、散った乾いた銀杏の葉っぱの上を数匹のスズメ達が、ちゅんちゅんと鳴いて跳ねていた。
【距離】
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12/2/2024, 6:43:00 AM