な子

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【君が見た景色】

なるほど。
これが、君が見た景色か。
ようやく同じところに来れたみたいだ。
確かにこれじゃあ、逃げ出したくもなる。
上司は態度で仕事を急かし、
同期は笑みで仕事を押し付ける。
終わってるっていう表現が正しいね。
そして君の言葉は誰にも届かない。
上に行く前に、潰される。
「いい加減にしろ!」
俺が大声で叫ぶとオフィスが一瞬静まった。
上司が怪訝そうな顔を向ける。
「なんだね、急に。仕事を辞めたければ勝手に」
「辞めるのは、お前たちの方だ」
俺は立ち上がり、変装をとく。
「この顔に見覚えがないか? この会社の社長だが」
オフィス内の空気はみるみる冷えていく。
大きな会社ゆえ、変装してしまえばバレなかった。
「部下が亡くなったと聞いて来てみれば」
俺は怒りを腹にしまい込んだまま、笑う。
「辞表を書くのはお前たちのほうだ」

8/14/2025, 9:17:20 PM