はた織

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 この両手で貴方から水を注いでもらう。
 やたらと長い生命線の筋を辿って、水を口の中に流し込む。勢いあまって、味が分からなかった。

 もう一度手を添えるが、貴方は私にまだ飲むのかと尋ねてきた。うなずく私に、貴方は本当にかと用心深く聞いてくる。はいと返事をしたら、先ほどよりも少ない水を渡された。
 その水の少なさに驚いて、私は黙って手のひらの水たまりを眺めた。じっと目をこらすと、私の手汗が真珠の粉をまいたようにキラキラと輝いている。

 さっきの水よりも美味しそうだ。私は水に口付けをしてから、唇を開いて歯を濡らし、舌の上に水を転がして上顎に水の冷気を当てさせ、そして喉の奥へするりと流し込んだ。胃の中に飛び込んだ水の温かさが、内臓を潤す。鼻の奥から雪解け水のような甘い香りが、ふわりと漂ってきた。

「貴方のさかずきで飲んだこの水は美味かったか」

 はい、ごちそうさまと私は白き鴎に向かって両手のさかずきを捧げた。
 どうぞまたここに、あなたの愛を注いでください。
               (241213 愛を注いで)

12/13/2024, 1:02:28 PM