美夜

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 『手ぶくろ』


 「……寒い。」
 私がコートの肩を身震いさせていると、隣の彼がそっと手ぶくろを片方差し出した。
 「手ぶくろ、半分こ?」
 私が笑い掛けると、彼も微笑んでもう片方の手をやさしく握ってポケットに仕舞った。
 「片方で充分だろ?」
 繋いだ手があったかい。
 手ぶくろの温もりと、彼の体温とに包まれて、私の両手がしあわせになった。
 本当は手ぶくろ持ってたけど、今日は忘れたことにする。

12/27/2022, 11:30:07 AM