酸素不足

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『「ごめんね」』


どうして、あんなこと言っちゃったんだろう。
ちょっとイライラしてただけで、本当はあんなこと思ってないのに。
時間が経って、冷静になったら、すごくすごく後悔した。
早く謝って、仲直りしたかったのに。


「ねえ、あたし、まだ、ごめんって言えてないよ?」

まるで眠っているかのように棺に横たわる彼に、問いかける。
でも、彼が目を開けることも、私の問いかけに応えてくれることもない。

彼の顔の横に、名前も知らない真っ白な花を置く。

「ごめんね。酷いこと言って。本当は、大好きだよ」

止まることを知らない涙が、ぼたぼたと彼の彼に落ちていく。
それでも、彼の心臓が動き出すことはない。

「ごめんねっ……。ごめっ、ね……、ごめんねぇえ」

私は、流れ出す涙と共に、口からはごめんねが溢れ出た。
号泣しながら、何度も何度も謝罪を繰り返しても、彼に届くことは無かった。

5/29/2024, 11:50:15 AM