憂一

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『風に乗って』

龍の背に乗って、少年は空を駆けていた。
見下ろすと、先程出発した城のある町がずっと遠くに見える。
「本当にひとりで行くのか?」
龍が少年に尋ねる。
「うん、これ以上みんなを巻き込むわけにはいかない。大切な人たちを傷つけたくないんだ。」
迷うことなく、少年はそう答えた。
少年はこの旅の中で、仲間たちが傷つくのを、悲しむのを、二度と会うことが叶わなくなるのを、何度もみてきた。
それゆえ、最後の遠征は何があってもひとりで行こうと覚悟していた。
「お前は頑固だから、私が止めても行くのをやめないだろう。だが、お前が帰らなければ、お前の言う大切な人たちがこの上なく傷つくことをゆめゆめ忘れるな。お前の行いは、お前の想いに反するものになりうるということを。」
「わかっているよ。必ず邪智暴虐の女王を倒し、この国を救ってみせる。」
少年は答えと同時に龍の背を掴む両手にぐっと力を入れた。
龍は女王の待つ呪われた塔に向かってより一層速度を上げた。

4/29/2024, 10:49:02 PM