「虹が見えるまでもうすぐかな」 待ち遠しそうに君が言う。俺はチラッと時計を見た。十六時五十分。通り雨とはいえこの頃日没が早いから厳しいかもしれない。 雨は君の思惑とは違い、十八時過ぎまで降った。すっかり辺りは暗くなっていて、虹なんて現れる気配はない。「ねえ見て」 君が窓の外を指差した。釣られて目を向ければ、丸々とした月が大きく輝いている。「月が綺麗」 うっとりと月を見上げる君の横顔。俺は月よりも君にずっと見惚れていた。『通り雨』
9/28/2024, 4:07:02 AM