俺の前に落ちてきた花びらを、咄嗟に手に乗せた。
小さなひとひらの花びらに愛らしさと愛着を覚えて、ふと彼女の顔を思い出した。
「会いたいな」
でも、理由もなしに会うのもな。新しいクリームソーダを渡しに行こうか。
そもそも出勤しているのだろうか。
救急隊の仕事で会うにしても、彼女が怪我をしているから却下だし……。
「会いたい……な……」
つぶやく言葉は無意識で。ピンクとは縁のない彼女だけれど、愛らしさで彼女を思い出した。
あの笑顔が見たい。
彼女と話したい。
同じ時間を過ごしたい。
ひとひらの花びらと共に、落ちていく春の――。
おわり
三三四、春恋
4/15/2025, 12:42:14 PM