風雪 武士

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誰よりも、ずっと。

僕はボクサー。
両手にはグローブをはめて、ガウンを羽織り、トランクスを履いている。。
日本武道館の控室で椅子に深く腰かけ、目を閉じて精神を統一している。
だが、心の中は不安と恐怖で凍りついていた。
今日のタイトルマッチは勝てるだろうか?
対戦相手も勝つ為に必死で練習して来ている。
敵の強烈なパンチで、眼底骨折したらどうしょう…。
いや、大怪我どころか、死ぬんじゃないか!!
去年ボクシングの興行で当日の試合中に2名の選手が亡くなる悲劇があった。
対策は日本で開催される東洋太平洋タイトルマッチ等は12ラウンドから10ラウンドに変更になっただけだ。
怖い…。
勝つどころか無事に試合に終えられるか心配で心臓が張り裂けそうだ。
その時、ドアが開いてトレ−ナ−が入って来た。
「どうだ、今の心境は?」
トレ−ナ−が聞いてきた。
「正直、怖いです!リングに上がりたくないです!!もう帰りたいです!!僕は臆病な男です」
僕は正直に答えた。
「あのな、リングに上がるボクサーは誰だって怖い。恐怖と戦っているんだ!あのカリスマボクサー辰吉丈一郎さんでも試合前にこの会場から逃げ出す自信がある!と言っていたぐらいだ。だから恥じることはない!お前は今日の為に、誰よりも、ずっと練習してきたじゃないか!辛い減量にも耐えてきた。だから安心しろ!」
「はい、ですが、今日の試合で大怪我どころか死んでしまうか不安でしょうがなんです」
「大丈夫だよ!心配すんな!ヤバいと思ったらタオル投げてやっから!俺が無事にリングから降ろしてやるよ!分かった?」
「はい」
「じゃあ、立て!」
僕は立ち上がってトレ−ナ−と向かい合った。
「お前は誰よりも強い男だ!」
「はい!」
「お前は死ぬほど練習してきた、だから絶対に勝つ!」
「はい!」
「お前はこの試合に勝って栄光を手に入れる!」
「はい!」
トレ−ナ−は僕を鼓舞した。
その時、会場から僕の入場テ−マ曲がかかった。
「よし!行くぞ!!」
「はい!」
僕は己に勝つ為にリングに上がる。

4/10/2026, 3:10:59 AM