うぐいす。

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 世界不思議。
 セカイフシギ。二年三組。女。
「先生、違います。名字も名前も間違いです」
「ん、ああ・・・悪い。えーっと・・・」
「ヨカイワンダーです。セカイじゃなくてヨカイ。フシギじゃなくてワンダー」
「・・・悪かったね」
 先生はそう言って、漢字の上に書かれたふりがなを消しゴムで雑に消した。
 私は私で、先生との会話を経て、今一度自分の名前を頭の中で描く。
 世界不思議。
 小学校で習う漢字で構成されていて、書くこと自体に苦難はない。
 問題は読みだ。
 多分、一発で読める人はいないんじゃないだろうか。
 名字の方は、まあ良い。文句を言ったって、両親に言って解決する問題じゃないし、頑張れば一発で読めなくもない。
 けど、名前がなぁ・・・。ワンダーって。マ◯オじゃないんだから。
 それにアレだ。このフルネームだと、最近終わりを迎えた番組に訴えられる可能性があるではないか。名前の後に「発見」が付いていたらと思うと、身の毛もよだつ恐ろしさだ。
 確かに、この多様性の時代、キラキラネームだって普通の名前になるくらい、当て字は増えていると思うけれど、それにしたって、これはないと思う。
 ティアラちゃんとか、ルビーちゃんとか、アクアマリンとかよりも酷いと思う。
 泣きたくなるよ、全く。
 なんだって両親は、こんな名前を付けたのかと不思議に感じる——不思議(ワンダー)だけに———ので、学校が終わったら、改めて母さんに聞いてみるか。例のあの番組を思い出したから、とか言いやがったら、・・・非行してやる!

7/20/2024, 12:12:03 PM