葦田香亜流沙/あしたがあるさ

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夢が醒める前に3/21

 きっと夢だけど、醒めないで。


「今日の放課後、校舎裏に来てください」
下駄箱にこんな手紙が入っていた。
急いでひっくり返したり、封筒を覗き込んだりしてみたけれど、名前は見当たらない。
 この手紙が、横山先輩からだったらな、、、とふと思ってしまう。
 横山先輩には、半年前から恋をしている。
 そして、そんなことをぼーっと考えていると、前から歩いてきた先生とぶつかってしまった。
 「すみません!」
 と反射的に謝る。そしてふと床を見ると、ノートが散らばっていた。
 「あ、拾いますよ。」
 と言い、ノートを拾う。その中に、横山先輩のものもあった。
 私は固まった。手紙の、「今日」の文字と、ノートの「今日」の文字の筆跡が同じだったのだ。
 私の心臓は、ばくん!と高鳴った。

 それから放課後まではあっという間だった。
 そして、放課後になって、校舎裏に行くと、少し顔を赤らめた、横山先輩がいた。私も耳まで赤くなる。
 「ずっと、本田さんの優しいところが好きでした!付き合ってください!」
 夢ならば、醒めないでくれ。
 どうせ夢だろうけど、醒めないでくれ。

 「はい、喜んで」

 オーバーヒート寸前の心臓を抑えながら言う。
 そして、その後、一緒に帰る事になった。
 長い夢だった。でも、どうせそろそろ醒めてしまう。
 それが嫌で、引き留めたくて、手を繋いだ。
 夢とは思えないほどに、温かかった。
 もう満足だ。醒めてもいい。そう思って、ほおの内側を強く噛む。
 痛い。ちゃんと痛い。


 今まで、諦めかけていた嬉しさが、今一気に押し寄せてきた。

3/21/2026, 7:56:42 AM